「最古の中華鍋を探しにいく。そこに原点の中華料理があるはずだから」。そんな仮説から始まる、四川省への旅を描いたドキュメンタリー映像『極(プレミアム)中華道 〜最古の鍋で原点を食らう〜』が、大きな反響を呼んでいます。
スタート早々、中華鍋探しは難航。聞き込み情報を頼りに“回鍋肉村”へ辿り着いたり、124歳のおばあさんに出会ったり。予定調和なしの珍道中の果てに見つけたものとは…!?涙あり笑いありのドタバタ旅の裏側を、本作の仕掛け人でもある旅人ふたりが語ります。
インタビューした人
映像ディレクター
大前プジョルジョ健太さん
法政大学卒業後、TBSテレビに入社。報道からバラエティまで幅広く担当し、『不夜城はなぜ回る』でギャラクシー賞を受賞。独立後はABEMA『国境デスロード』を手がけ、放送文化基金賞を受賞。趣味は煙火従事(打ち上げ花火)とスキューバダイビング。
インタビューした人
「Cook Do®」極 開発責任者
阿部洋平さん
2023年から「Cook Do®」をはじめとするメニュー用調味料ブランドを統括するマネージャーとして勤務。それ以前の2年間は「Cook Do® きょうの大皿」を担当。 旅行と食べることが大好き。インドネシア駐在時は仕事・プライベートでほぼ全ての島を訪問した。
- 「古い中華鍋を探す」プランが早々に失敗…!?
- 四川料理は辛くない!? 現地で知った中華料理の意外なリアル
- リミッター解除した「Cook Do®」極は“8割現地”の味
- 見れば中華がよりおいしくなる! 本作の見どころ
01
「古い中華鍋を探す」プランが早々に失敗…!?
―笑えて泣けてお腹が減って、51分のボリュームで見応えある作品でした。このドキュメンタリー企画が生まれたきっかけを教えてもらえますか?
阿部洋平さん(以下阿部さん):我々のおいしさへの探究心を、映像作品化したいと始まった企画でした。本場の味を追求した「Cook Do®」極(プレミアム)シリーズは、レシピの背景にあるファクトを通して、より奥深い食体験を提供したいという想いから生まれた製品です。そうした体験を映像でも表現したいと。

大前プジョルジョ健太さん(以下プジョさん):最初、 “中華料理の原点”に迫る、10分ほどの短尺でドキュメンタリー映像を制作してほしい、というお話でお声がけいただいたんですが、この熱量と壮大なテーマを10分で……!?と悩みました(笑)。それから本を読んだり町中華に行ったり自分なりにリサーチを進めたのですが、“中華料理の原点”なんてそう簡単にわかるものではなくて。そこで「古い中華鍋を探せば、原点の中華料理にたどり着けるんじゃないか」と仮説を立て旅に出るという企画になったんです。仮説を立てて検証する以上、10分では足りないので、長尺でいこうと相談させていただきました。
阿部さん:おいしさの背後にあるファクトを大切に開発を進めてきた「Cook Do®」極シリーズならではの表現ということで、おいしさの原点を追う中で出会う、現地の生活者の方々のリアルな表情と鍋の質感を映像に収めていくというイメージがありました。100年ものの中華鍋に出会い、現地の人々と心を通わせる……そういうシーンを撮れたらと考えていたのですが……。

―実際の旅は、当初のイメージどおりに進んだんですか?
プジョさん:それが、ぜんぜん予定通り進まなくて(笑)。というのも、古い中華鍋が見つからないんです。いろいろな人に聞いて回ってもせいぜい5年もので。
阿部さん:現地に行って分かったことですが、中華鍋には寿命があって、毎日使っていれば数年で買い替えるものらしいんです。
―数十年レベルの中華鍋は、現地ではほぼ使われてないということですよね。すると、そもそもの仮説が立証できない可能性が高くなってしまった。
プジョさん:そうなんですよ。とはいえ、味の素さんには「仮説を検証する以上、上手くいかない場合もあるでしょうが、そのままドキュメントしてほしい」と言われていたんです。「我々で新しいことに挑戦しましょう! それこそが極シリーズのテーマ“リミッター解除”なので!」と決断してくださった。すごい会社だなと思いましたね(笑)。
そうしたチームの姿勢に救われたところは大きかったですが、狙ったものが撮れないとディレクターとしてはやっぱり焦りましたね。

阿部さん:最初の想定は叶いませんでしたが、4時間かけて行った村で124歳のおばあちゃんに出会えて、その方の中華鍋が3年ものだったり。これはもう、逆に面白いんじゃないかと思いましたね。
プジョさん:そこから代々受け継ぐ大切な中華鍋は、特別な祝い事の時しか使わないので古いまま残っていることが分かってきて、路線を変えて取材を進めることができました。最終日に出会えたあの大きな中華鍋で食べる四川料理は、何とも言えない特別なおいしさでしたね。
02
四川料理は辛くない!? 現地で知った中華料理の意外なリアル
―特に印象的だった料理はありますか?
プジョさん:個人的には映像にも登場する李さんの回鍋肉です。闘病中の認知症の奥さんのために、義理のお父さんから受け継いだ鍋で料理を作っている、78歳の方です。
―あのシーンは感動的でした。

プジョさん:李さんは義理のお父さんのレシピで回鍋肉を作ってくれましたが、圧倒的においしかったんです。その理由は、僕もまだうまく言語化できないんですけど、作る方の気持ちや家族の暮らしなど、受け継がれていくものがあるんだなと実感しました。
阿部さん:回鍋肉は象徴的でしたね。四川といえば麻婆豆腐のイメージだったのですが、現地のご家庭では圧倒的に回鍋肉がよく食べられている印象でした。現地の皆さんに「四川料理といえば?」と聞いても、「回鍋肉」と答える方がすごく多かったですね。

―李さんも、回鍋肉は「四川人が一番愛している誇り」と語られていました。
阿部さん:「北の地域で作られる回鍋肉は甘くてソースがリッチなんだ」みたいな話も聞きましたね。本当にソウルフードみたいな感じでした。
プジョさん:あと僕が驚いたのは、家庭料理が意外に辛くなかったこと。街のお店では辛いものはたくさんあるんですけど、家庭料理は辛さの質が違うんですよね。優しいというか。

阿部さん:食べた瞬間に来る、いわゆる激辛とは違う辛さでしたよね。ボディブローのようにズンズン来る感じで。
プジョさん:油をたくさん使うことにも驚きました。みなさん菜種油を使ってましたけど、油や調味料の使い方にも注目して見てもらえたら面白いかもしれません。
ひとくくりに四川といっても、色々な家庭や事情があり、回鍋肉にしても家庭ごとに味付けが変わるんですよね。日本の食事で考えれば家庭ごとの味があるのは当たり前なのに、海外の食となると、知らず知らずのうちに偏った印象を持っているんだな、と。改めて異国の地で暮らす人々に想いを馳せるきっかけにもなりました。


阿部さん:現地の家庭の味を通して学びはたくさんありましたね。「Cook Do®」極 麻辣回鍋肉用をご自宅で料理される際も、厚めの豚バラを使ったり、長ねぎの青い部分をしっかり入れると、さらに本場に近い味になると思います。あとは長ねぎの青い部分をしっかり入れると見た目も葉ニンニクのように見えるのでオススメです。

03
リミッター解除した「Cook Do®」極は“8割現地”の味
―現地の方に「Cook Do®」極シリーズを食べてもらった手応えはいかがでしたか?
阿部さん:現地の方々に食べていただいて表情が緩むのを見たときはすごく嬉しかったです。「8割四川料理って言っていいんじゃないの?」みたいにお墨付きをいただけたのは自信になりました。

プジョさん:中国の方って裏表がない感じがしますよね。まずいものはまずい、おいしいものはおいしいって。その中で、10人に聞いたら8人は本当においしいって言ってて、本当にすごいことだなと思いましたね。
阿部さん:正直、辛さがまだ足りないという方は多くいらっしゃいました。ただ、醤の香りは認めていただけたと思います。本音の感想をいただくことを徹底していたので、毎回ドキドキでしたし、緊張感のある私の表情が動画に残されているので、そこにも注目いただけたら嬉しいです(笑)。
プジョさん:阿部さんの安堵した表情に、手応えが表れてますよね。あとは四川の方々の表情も注目して頂きたいポイントで、目線や声色や表情を見ていると、言葉は分からなくても伝わるものがあるはずです。国籍は違っても同じ人間だなとつくづく実感します。
―ちなみに「リミッター解除」というキーワードが出てきましたが、これはどういうことですか?
阿部さん:私たちメーカーは最大公約数みたいな製品を作る立場でもあるので、ある程度のリミッターが必要なことも多いんです。振り切っちゃうと皆さんにとっていい製品じゃなくなってしまうこともあるので。ですが「Cook Do®」極シリーズではそのリミッターを解除して、喜んでいただける方を絞ろうと踏み切りました。
プジョさん:阿部さん的には、どのあたりがリミッター解除なんですか?
阿部さん:現地の味に忠実に作っているのはポイントかなと思います。わかりやすいのは辛さですね。

プジョさん:めちゃくちゃ辛いですもんね。
阿部さん:そうなんですよ。その上で、現地で学んだのは、四川料理は辛いだけじゃないということ。例えば醬やスパイスで香りの豊かさにもこだわっているのですが、香りって強く人の記憶に残りますよね。香りが振り切れていると、もう一度食べたいと味として印象に残るのではないかと。
―他に現地で学んだことはありますか?
プジョさん:僕は、現地の方もそうですが、実は阿部さんの熱量にもずっと感動していました。探究心がとんでもないというか、もう異常なんですよ。常に細かいメモを取っていて質問が止まらなくて。途中から阿部さんを取材したいとさえ思いましたし、こんな阿部さんのような人が勤める会社ってどんなのだろうと興味が出て、気づけば転職の相談までしていました。

阿部さん:実は、味の素社って、プジョさんの活動に通ずるところがあると思っているんです。例えば、私達のASEAN地域での事業は先人の開拓者精神が基礎となって形になっています。未開拓エリアでゼロから人間関係を築いて、少しずつ販路を広げていく。そういう現場主義の考え方はプジョさんの生き様に通ずる。今回の映像作品も、実はすごく味の素社らしい作品ではないかと思っています。
04
見れば中華がよりおいしくなる! 本作の見どころ
―最後に、あらためて映像作品の見どころを教えてください。
阿部さん:四川は食べ物に困った苦しい時代があったことを語ってくれる方に多く出会いました。地理的・気候的にも食料の保存が難しい中で、スパイスや辛さを効かせた保存の効く食べものをつくってきた。苦しい中で工夫しておいしいものを創造してきた歴史が四川料理のルーツにあるんですよね。見ていただける方にも、そうした食の背景にある歴史とヒューマンドラマを感じていただけたら嬉しいなと思います。

プジョさん:ちょっと話が逸れるかもしれないですけど、僕、ダイビングが好きなんです。海に潜り始める以前は、「水平線が綺麗だな」と思っていました。でもダイビングを始めて海に潜るようになってからは、海を見ると水面の下を想像するようになったんです。ファクトを知ることで、見え方が全く変わったんです。
同じように、以前は四川料理と聞くと漠然と「辛いんだろうな」という程度の印象しかなかったんです。でも、今回の旅で四川の歴史や人の気持ちに触れて、味わいが全く変わりました。貴重なお肉を大切においしく食べようとしてできた回鍋肉があると思えばおいしさもひとしおです。そういう話を、映像を通して触れていただければ、本当に料理の味が違ってくると思います。

